えば

今日から1週間、こひくんは出張だよ。ホントは月曜からだけど、ちょっと場所が遠いので前ノリするため今日からだ!まったくお疲れさまです。でもうまいものがたくさんありそうなところなので、それはよかったと思う。お土産も楽しみだね。いってらっしゃい。お気をつけて!


で、さっきこひくんから「着いたー!」と電話があったよ。宿泊先があまり気に入らなかったらしく、ホテル選びを間違ったとグチグチ言っている。どうやら部屋でネットが使えなかったらしい。なんでちゃんと調べてから予約しなかったのさ?とわたしが言うと、こひくんはこう言った。
「もちろん事前にネットで調べたよ!調べたんだけど、朝ごはん食べ放題と書いてあったから、つい予約してしまった。他の項目をチェックする余裕がなかった。」

余裕て!オマエは余裕がなくなるほど『朝ごはん食べ放題』の文字に心を奪われたのか・・・。それならばネットができないくらいでガタガタ言うなよ、と思った。朝ごはんがたらふく食べられる、もうそれでいいじゃないか。

それからこひくんはこんなことも言っていた。
「今回の出張は、なんかヘンな上司と一緒だからイヤなんだよねー。」

ヘン?ヘンってどういうこと?嫌なやつなのかい?わたしがそう聞くと、こひくんは「えー!?うーん・・・」と少し考えてからこう言った。
「だってオタクで気持ち悪いんだもん。」

!!??

こひくんのこの言葉に、わたしは心臓が裏打ちになるくらい驚いた。『オタクだからイヤ』って・・・・・・キミだってオタクじゃないか。いつの間にオタクから足を洗った気になっているんだ。自分の思い込みだけ変えたって他人の目は変わらないぞ!キミはいまだに、どこからどう見てもまごうことなき立派なオタクだ。見た目で合格だ。そんなキミが、オタクだという理由だけで上司をけなしていいものか?
そう思いつつも、それは口に出さず、かわりに「パソコンオタクとかアイドルオタクとかいろいろ種類があるけれど、その人はどういうオタクなのかね?」と尋ねてみた。
こひくんは「ふーっ」とため息をつきながらこう答えた。

「あの人は完っ全にアニメオタクだね。絶っ対エヴァとか好きなんだよ!」

!!

オマエだってエヴァ大好きやないかっ!!!
まったく、どこまで自分を棚にあげるつもりだ!と思いながら、わたしはこひくんに嫌味を込めてこう言った。
「そんなに嫌わなくても、こひくんだってエヴァ好きなんだから、一緒に飲みにでも行ってエヴァ話で盛り上がったらいいじゃないの。オタク同士で。」

するとこひくんは最後に、もっとも驚くべきことを口走った。
「ちょっとーやめてよー。俺オタクじゃないんだから、エヴァ好きの人とエヴァの話して盛り上がったって楽しいわけないじゃーん。俺は、みほみたいにエヴァをまったくわかってない相手に話して、相手がどんどん引いていくサマを見るのが好きなんだから!」


・・・な、なんたる言い草!!
つまり、仲間同士でアニメなどの特徴的な趣味の話題で盛り上がる人たちが真のオタクで、引かれ待ちで話している自分のような人間はオタクではない、ということか??

うーむ・・・わかるようなわからないような。オタク道って深いなぁ。



でも、これだけは確実にいえる。
仲間同士好きな話題で盛り上がっているだけのオタクより、相手が自分に引いていくサマがたまらんという人間のほうが、絶対気持ち悪い。なんかヘンな性癖っぽい。

その気持ち悪さを考えたら、上司の気持ち悪さなんてどってことないさ!そう思って1週間がんばれ!