ぶーぶ

こひくんが、子供の頃の話を聞かせてくれた。
それによると、こひくんは3歳ごろまで、まともに言葉を発しないお子さんだったという。

わたしは子供を産んだことがないのでわからないが、自分の子供が他の子より明らかに成長が遅いというのは、親にとってはかなりドキドキすることだと聞いている。
3歳までまったく喋らなかったとなると、こひくんのご両親もそれはさぞかしドキドキされたことだろうね。
わたしがそういうと、こひくんは
「でも、3歳になったら急にペラペラと喋り出したから、親は『コイツ、今まで喋るのをサボっていやがったな』と思ったらしいよ。」
と言った。
わたしは、確かにこひくんならそのくらいのことはやりかねないね。と思った。
「そんなことまで手抜きをするとは、いかにもこひくんらしいね。」
わたしがそう言うと、こひくんはこう返してきた。
「いや、違うんだ。決して喋るのをサボっていたわけではない。ただ俺は、子供だからって『ぶーぶ』とか『わんわん』とか『まんま』とか言うのが嫌だったんだと思う。そんな言葉を喋るくらいなら、正しい言葉をマスターするまで待って、それから喋り始めたかったんだと思う。」


・・・・え?待って待って?じゃあなにかい?オマエは3歳まで一切喋らなかったくせに、3歳になったら唐突に、
「お母さん、あそこに車が停まっていますね。」
とか言い出したんかい!?
なんかキモい。なんかヤダ。子供には素直に『まんま、ぶーぶ』と言ってほしい気がする。


でもまぁ、多少成長が遅かったにしても、今はこうして必要以上にペラペラ喋れるようになったのだから、たいしたものかもしれないね。と思った。


だから、もし子供の成長が遅いことを心配しているお母さんがいらっしゃったら、「そんなに心配することはないと思いますよ。」と言ってあげたい。
きっと、こひくんみたいに立派(?)でペラペラとよく喋る、素直な子になるだろう。