植物

今日は土曜日なので、こひくんと二人で公園に行った。
公園には草花や木がいっぱいある。
こひくんは、田舎生まれ田舎育ち田舎っぽいやつはだいたい友達田舎っぽいやつを嫁にもらったくせに、草花の名前を全然知らないのでびっくりした。田舎甲斐のないやつだと思った。
れんげ草や貧乏草さえ知らないんだ。
わたしは懇切丁寧に、貧乏草について説明してあげた。
「白い花のやつを飛ばしてぶつけると、ぶつけられた相手は貧乏になるんですよ。」
こひくんは「ふーん」と言った。
「子供の頃に草花で遊ばなかったのかね?」とわたしが聞くと、こひくんは「記憶がない」と答えた。
わたしは、記憶がないなんてかわいそうだなぁと思った。
わたしには記憶がいっぱいある。
からすうりの中身を足に塗ると足が速くなるので、持久走大会の朝は誰よりはやく学校に行き、そこいら一帯のからすうりをすべて取り去って、他の人の足が速くなるのを阻止したりした。
オナモミをたくさんとって、すれ違う人の背中にくっつけながら下校したりもした。
こういった、子供の頃の植物との触れ合いが、今の自分を作る肥やしとなっているのだよ。
わたしがそう言うと、こひくんは「ほぅ!」と感嘆の声をあげ、笑顔でこう言った。


「遊び方が全部、いじめっこの遊び方だね!」


―ムガーッ!
そんな話してないのっ!今は植物との触れ合いについての話っ!そもそも、なんでわたしがいじめっこやねん!


人の美しい思い出を、悪い思い出みたいにしてくれるなよ。と思った。
こんなことならわたしも「記憶がない」ってことにしとけばよかったね。とも思った。