出世

こひくんが、「俺って出世できるかなぁ」とわたしに聞いてきた。頑張ったらなんとかなるかもしれないけど、頑張らなければできないだろうね。なんだかそんな気がするよ。そしたらこひくんは「みほは俺に出世してほしい?」とも聞いてきた。こひくんがしたければすればいいし、したくなければしなければいいね。それが自然な流れだね。するとこひくんはこう言った。


「よーし!じゃあ俺、上がっちゃおっかなぁー?」


ニュアンス的には、女が言う「暑いから脱いじゃおっかなー?」とか「今日は飲んじゃおっかなー?」とかに近かった。じらす感じっていうの?でもわたしには、こひくんからじらし口調でそんなことを言われる意味が、まったくわからなかった。上がってくれなんて一言も言ってないし、じらしていいのはオマエがそのことについて決定権を持っているときだけだろう。上がるか上がらないかの決定権は、オマエにはないよ?会社のエライ人が決めるんだよ?自分が上がりたいと思えば上がれるもんだと思ってるのかな。島耕作の読み過ぎで、頭がおかしくなっちゃった?そういえばおとといくらいの電話で、島さん島さん騒いでたような気がするな。島さんがまた黄金パターンに入ったよ!とか?女と知り合って?助けてもらって?昇進昇進?四っ国四っ国?またかよ島さんずりーよ!いつもそれじゃん!男として全然尊敬できねーよ!と騒ぎつつも、こひくんは島さんに夢中なんだね。黄金パターンに入るとテンションが上がるんだね。もしかしたらこひくんは、『尊敬できねー』と言いながら、心のどこかで島さんに憧れているのかな。そう思うと不安だね。現実の女がみんな、いつでもどこでも服を脱ぐと思うなよ。そしてオマエを出世させてくれると思うなよ。ばかばかばか。出世なんてしなくてもいい、たくましく育って欲しい。