合わない相手

こひくん、会社ではクラスごとにわかれて研修を行っているらしい。先週で基本研修が終わり今週からは技術研修に入るということで、それにあたってクラス替えがあったんだって。

「俺、気が合わないなぁと思ってた人がいて、その人とまた同じクラスになっちゃった。」

電話でこひくんがこんなことを言い出して、わたしはとても驚いた。こひくんが人に対して「気が合わない」とか言い出すなんて、なんか珍しい。そいつがよっぽど嫌なやつなのか?と思い、「なんで気が合わないと思うの?なにかされたりしたの?」と聞いてみた。するとこひくんはこう答えた。
「されたっていうか…俺の話遮るんだもん。」
なんじゃそりゃ、別に嫌なやつじゃないじゃん、それくらい。
「だって最後まで聞いてくれないんだよ?いっつも途中でしゃべりだすの。全然関係ない話とか。ヒドくない?人の話は最後まで聞かなきゃダメだよね!」
確かにそうだけど。でもその程度のことで嫌いになったりしてたら、損ですよ。もっと仲良くやりましょう。自分が悪かったのかもしれないとは考えたのかい?自分の話がダラダラ長すぎたんじゃないかとか、つまらなかったんじゃないかとか。
「あぁ、なるほど。そういう考え方は思いつかなかった!でも別に長くはなかったと思うんだけどなぁ。やっぱりなんとなく合わないんだよなぁ、あの人。」
うーん、そっかー。
「あ、でも今日その人から『こひくん!俺のとなり座りなよ!』って言われたよ!なんでかなぁ。あの人だって絶対、俺と気が合わないって思ってるはずなのに。」
えー!それはきっと、その人こひくんのことが好きなんだよ!
「えーっ!気が合わないのわかってるのに!?」
そうだよ!だって、気が合う=好きとは限らないじゃないの。気が合うけど嫌いって場合もあれば、気が合わないけど好きっていう場合もあるはずだよ!だからその人はきっと、こひくんのこと気が合わないけど好きなんだよ!
「えーそうかなー!?えー!俺のこと好きなのー!?えー!…あ!でもそういえば、俺もその人のこと気が合わないとは思ってたけど、嫌いではなかった!」


なにそれ!オマエ、『自分のこと好いてくれてるかも!』ってなったら急にコロッと態度変わり過ぎ!と思った。


でも、こひくんの声がとても嬉しそうだったから、明日からはその人と仲良くやっていけるかもしれないなぁ。そうなるといいなぁ。とも思った。