うたうおんな

こひくんとカラオケに行ったよ。
あんな曲やこんな曲を歌ったよ。
歌っているうちに部屋がものすごい暑くなってきたよ。
上着を脱いだけどまだ暑い。暑い暑い暑い。
部屋にデブがひとり紛れ込んでいるから?・・・ね、こひくん。
あーとにかく暑い。それにしても暑い。うっすら汗まで掻きだした。
こっそり持ち込んだチョコレートも溶け出した。
どうなってるんだこの暑さは。
でも、涼しくする方法がわかりません。
窓は開かないようになっているし、エアコンはあるけどリモコンがありません。
この現代に生きていて、涼しくする方法ひとつわからないなんて、我々は馬鹿か?
あぁもういっそ過去に戻してくれ。エアコンのなかったあの頃に・・・。
そんなことを考えていたら、こひくんがこんなことを言い出した。
「もしかしたらこの建物は、燃えているのかもしれない。」
それを聞いてわたしは、こう思った。
「あり得ない話じゃない。」
だってほんとにすごく暑いし。ムシムシするし。
個室の中にいると外の様子はわからないじゃないですかぁー。
だからぁー燃えてても不思議はないじゃないですかぁー。
いや、むしろこの暑さから考えるとぉ、燃えてるほうが妥当なくらいじゃないですかぁー。


こういう、『オタクの真似をしているときの塚地(ドランクドラゴン)』のような喋り方をするやつがこひくんのゼミにいるらしく、こひくんは毎度毎度、笑いをこらえるのが大変だと言っていたことを今思い出した。


カラオケ屋の外に出たらものすごく寒くてびっくりした。
建物には、煙ひとつあがっていなかった。


もしかしたら、一度燃えた建物を急いで元通り復旧させたのかもね。と思った。
だって、個室の中にいると外の様子はわからないし。
その可能性もぉ、捨てきれないじゃないですかぁー。