床屋
こひくんが明日は床屋に行くと息巻いている。
就職が決まって以来ずっと伸ばしっぱなしでボサボサだもんね。切り時だね。
そしたらこひくんはこう問いかけてきた。
「でも、床屋のお兄さんに『今日はどーしますか』っていっつも聞かれていっつも困るんだ。アレはなんて答えればいいんだろうね?」
えー、そんなのわかんない。いつもなんて答えてるのさ。
「んー、なんか『とりあえず短く』とか。あと、『モミアゲはどーしますか』っていうのもいっつも聞かれるんだよ。それも答えるのが難しくてね。」
へー、それはいつもなんて答えてるの?
「わかんないから『おまかせします』って言っちゃう。」
じゃあそれでいいじゃん。最初から「とりあえず短く、あとはおまかせします」って言えば解決じゃん。それとも「おまかせで」と言うと、お兄さんに煙たい顔でもされるのかい?
「いや、そんなことはない。『おまかせします』と言うといつも、『はーい、オッケー。じゃー自然な感じでね!』と言われる。」
自然な感じ?
「うん。いつも言う。いつも、なにか聞かれて答えるたびに、床屋のお兄さんは『わかった。じゃー自然な感じにするね!』って言う。」
へぇ。自然な感じ。それはいいね。と思った。
でも、こないだ床屋に行ったときは、不自然な頭で帰ってきたね。とも思った。