スリッパ

わりと見苦しい

暇だったので、ふと思いたってこひくんをスリッパで殴ってみた。
唐突に殴られたこひくんは一瞬驚き、その後すごい形相でわたしを睨みつけ「いってぇな!!なにすんだよっ!」と吐き捨てるように言った。
うわー。人は唐突にスリッパで殴られるとそんなにも怒るものなんだね。知らなかったよ。しかし、そんなに怒るとは予想外だったなぁ。どうしよう。「えーっと…ごめんなさい。なんかスリッパで叩いたら面白いかなぁと思って。」
「面白い、って…いきなり理由もなく殴られたほうは全然笑えないよ!」
「こひくんてばかだなぁ。『理由もなく』っていうけど、理由もなく殴られるその理不尽さが面白いんじゃないの。そもそも、理由があって殴られてたらそれこそ笑えないでしょーが。」
「え…あぁ…ま、まぁそうか…?」
「でしょう?」
「あぁ、まぁ確かにね…」


とりあえずこれで一旦この話は終わったのだが、それからしばらくして、今度はわたしのほうがだんだん腹が立ってきた。「いってぇな!」ってゆうさっきの言い方には愛がなかったんじゃないの?なにもあんな怖い顔して怒ることないんじゃないの?
さっそくこひくんに「あれはヒドイ。わたしは小さなことで怒る人間は大嫌いだ。いたいよ?と言えばいいのに何故、いってぇな!なんて言い方するんだ。おまえはヤクザか。」と不満を訴えた。
するとこひくんは「お、俺そんなつもりじゃなかった。いきなり叩かれて驚いただけで、ホントは別に全然怒ってなかった。ヒドイ言い方してごめんなさい。」と謝ってきた。
今更謝っても許せるものか。この心の傷は一生消えないよ!とわたしが頑なな姿勢を見せると、なんとこひくんはこう言ってきた。


「ご、ごめん!も、もう一回チャンスをくれ!もう一回スリッパで叩いてくれ!」


…えぇ、もちろん叩きました。叩いてあげましたとも。バシッとね。もうビシッとね。
そしたらこひくん「全然痛くな〜いよっ♪」と両手を顔の横で広げて、おどけた顔をしてましたよ。(イラスト参照)