携帯

こひくんは半年ほど前からずっと「カメラ付きの新しい携帯が欲しい」と騒いでいた。
そしてどこかに出かけるたびに「ちょっとそこの携帯屋さん覗いていい?」と私には何の用も興味ない携帯屋に付き合わされ、正直うんざりしていた。
あまりにも携帯屋で足止めを食らうことが多いので、「そんなに欲しいならばさっさと買ったらどうだ。買わないならば、冷やかしはお店の迷惑だ。」と嫌みを言ってやったが、人の嫌みなんて屁のカッパなこひくんは「値段が高いから踏ん切りがつかないな」とかなんとか言いながら、覗くだけ覗いて買わない日々をずるずると続けていた。

そんなこひくんがこのほど、ついに新しい携帯を買った。
カメラ付き!felica対応!音楽も聴けちゃう!
とかなんとか、ヤツの携帯のそんな新機能のことなどどうでもよく、わたしにとっては「もう携帯屋に立ち寄らなくて済む!」ということがなにより嬉しかった。
「あんなこともできちゃう!こんなこともできちゃう!」と浮かれるこひくんと、喜びを分かち合うわたし。喜びの種類は違えど、嬉しい同士。
「よかったね。こひくんずっと欲しがってたもんね。」
「うん、ありがとう!」
「いやいや、ほんとよかったよ。私も嬉しいよ。」
「えーほんと?ありがとー!!あ、ねぇみほ!俺が買ったやつこの店はいくらで売ってるか見たいから、そこの携帯屋さん覗いていい?」


もう好きにして。