シュシュ

「ただいまー!」と帰ってきたこひくんが、わたしを見るなり
「あ!今日髪しばってるね!かわいいね!かわいいシュシュだね!」
と言ってきた。

わたしじゃなくてシュシュを褒めんのかいっ!とも思ったが、それよりなによりこひくんが『シュシュ』を知ってることにすこぶる驚いた。

女の人はまぁみんな知ってるでしょうが、オッサンは知らんでしょう。おまえも!おまえも!どうせ知らんだろうが!シュシュっていうのは髪をしばるための、布が輪になったゴムのことです。ちょっと説明が下手ですけど、オッサンは知らなくても生きていけるから大丈夫!!

そんなシュシュをこひくんが知ってるなんて!あまりの驚きに、思わず
「すごいねすごいねこひくん!シュシュを知ってるなんてたいしたもんだよ!女性文化に詳しいね!」
と手を叩いて褒めた。

こひくんはニヤニヤ笑いながら「えへ〜?そーお〜?」とまんざらでもない顔をした。
そして、褒められたのがよほど嬉しかったのか、
「俺、けっこう詳しいよ!女の言葉けっこう知ってるよ!『レギンス』も知ってるよ!」
と、こっちが聞いてもいないのに得意げに、女が使う言葉をツバを飛ばしながら次々に挙げだした。
「『パンプス』も知ってるしねー『チュニック』も知ってるよ!」
おーすごいすごい。
「あとねー、『コスメ』も知ってる!」
ほーほー。
「あとねーあとねー『デコルテ』!女は『デコルテ』って言うでしょー!それも知ってるよ!」
おーそんなことまで!たいしたもんだー。あとは?
「あとー?あとはねー・・・・・・あ!『ブルーディ』!俺『ブルーディ』も知ってる!」


・・・・・。


ブルーディって・・・・・。
確かに女特有の言葉といえばそうだけど、なにを自慢げに・・・・・。


ニコニコしながら「どう?俺すごい?すごい?よく知ってる?」という顔で褒められ待ちしているこひくんを横目に見ていたら、なんだかブルーディ以上にブルーな気持ちになるなぁ。と思った。