きゃー

こひくんのお父さんからちょくちょく電話がかかってくる。
いつもこひくんが電話に出るので、わたしは横で聞いている。
「みほちゃんは元気か」「みほちゃんと仲良くな」と、わたしのことを気遣う言葉が電話口から聞こえる。そのたびにこひくんは「じゃあみほに代わろうか？」と尋ねるのだが、お父さんは「やだやだやだ照れる照れる！代わんなくていいよ！」と言って、わたしと電話でしゃべってくれない。

今日もお父さんから電話があったが、案の定「照れるからムリ！」と言って電話を代わるのを拒まれた。
でもこひくんが「いい歳こいたオッサンがなにを言ってるんだ！」とむりやりわたしに電話を渡して「いいから出ちゃえ出ちゃえ」と言ってきた。
多少緊張しながら「もしもし？みほですけど〜…」とわたしが言うと、お父さんは

「きゃーーーーーっっ！」

と叫んで「みっみっみほちゃん！？おっおひさしぶり〜！」と言った。

わたしはこの人生で初めて、自分にむけられた黄色い歓声というものを聞いた気がして、テンションがあがった。
あぁ、お父さんはわたしのファンなのだなぁ、と思った。
いや、思ったというより決めた。
人のテンションこれだけあげといて、ファンじゃなかったら許さない。