カマーチョ

昨日部屋にでっかいカマキリが遊びに来た。勝手に。
名乗れと言っても名乗らないので『カマーチョ』と名づけた。こひくんは「カマーチョなんてヘンだ。俺はカマさんと呼ぶ。」と言った。わたしは意地でもカマーチョと呼ぶぞ、と思った。

カマーチョは夜になっても帰らない。
いつまで居座る気だ。でも動かないし静かだし、嫌な感じはしない。人間だったら、出世もしないけどクビにもならないタイプだろうとみた。
そんなことはさておき、一晩明けて今日になってもカマーチョは帰る気配を見せなかった。漠然と、「あぁ、これからは三人暮らし(正しくは２人と１匹)になるんだね。」と思い始めていた矢先、事件は起きた。

もじぴったんをしていたこひくんが、「みほっ！カマーチョがっ！カマーチョが！」と叫んだ。驚いて、カマーチョの定位置を見てみると…

もうそこにカマーチョの姿はなかった。

あぁ、カマーチョ。旅に出たんだね。自分の新たな居場所を見つけるために。さしずめ、おとなしかった社員のほうが唐突に会社を辞めるといったところだね。この暮らしには馴染めなかったんだね。ごめんね。
でもきっといつかまた、この部屋に遊びにきてくれるよね。

なんてことを考えるより先に「あ、こひくん今カマーチョって呼んだ。」ってことで頭がいっぱいだった。