減量

一緒に暮らし始めて半年。この間にこひくんは10キロほど痩せた。
わたし的には太っちょのままでも全然かまわなかったのだが、こひくんがあまりにも「痩せたい痩せたい」と騒ぐので、「よしわかった。そんなに痩せたいなら、一緒に暮らすのを機に痩せさせてやる。」とわたしも一念発起した。
そもそも、その気になればこひくんを痩せさせることは簡単だとわたしにはわかっていたのだ。
あの子が太っている原因。それは間違いなく『食べ過ぎ』なのだ。普段の食事を見ていればわかる。「足りなかったら怖い」といって、一度に3〜4人前のスパゲッティを茹でる。2,3日は持つような量のおかずを作るくせに、おかずがなくなるまでごはんをおかわりし続け1度で食べてしまう。食事の直後なのに、気付くとお菓子をつまんでいる。毎日必ずアイスを食べる。
・・・それが「痩せたい」と騒ぐ人間の態度か。
わたしが暮らし始めてまずしたことは、炭水化物の制限だ。
ごはんのおかわりはナシ。「足りなかったら怖い」という考え方も、「人は腹八分目までがおいしく食べられる。あとの2分は余計。」と呪文のように唱え続け、改めさせた。アイスやお菓子などの間食は、元々そんなにアホみたいに大量に食べていたわけではないので制限しないことにした。明らかに摂りすぎな炭水化物さえ減らせば絶対痩せる、という勝算があった。
そして現実そのとおりになった。みるみる痩せて、気付いたら10キロ減。
こひくんよくぞ頑張ったね。わたしのおかげだね?だよね?


ただ、わたしには唯一心配なことがあった。
わたしと一緒に暮らし始めてからこひくんがみるみる痩せていったら、「彼女と暮らし始めてからアイツはやつれた。」と噂されないか、ということだ。
実際には(わたしの協力の下)こうして計画的に減量したものの、はたから見ればそうは見えないのではないか。苦労でやつれたと思われるのではないか。

しかし、それは余計な心配だった。
ひさしぶりにこひくんに会う相手は皆「痩せた?すっきりしたねぇ!」とか「こざっぱりしたね!」などと言い、こひくんの両親に至っては「みほちゃんのおかげだ!」と手放しで喜んでくれ、「やつれた」などと言う人は一人もいなかった。
心配して損したっ。よく考えたら、元々太っちょなこひくんが10キロくらい減らしたところで、やつれたように見えるわけない。あり得ない。にゃにゃにゃにゃい。